コロナ渦において不動産のローンの返済が困難だという人が徐々に増えています。
返済が滞った状態が続くと、最終的に物件が差し押さえられて競売にかけられることになります。
ただし、すぐに実行されるわけではないです。
滞納後から様々な手続きがあり一定の期間が設けられますので、その間で債務者としてできることを対策しておきたいところです。
本記事では実行までの大まかな流れと対策方法について解説します。
ローンの返済が滞っている人は増えている
近年、不動産取引市場や新規住宅着工数などの供給推移は好調に推移していますが、その反面で住宅ローンなどの不動産担保融資の返済に支障を来たしている債務(リスク債権)がここ数年で増加しています。(リンク)
ローン返済が困難となっている最大の原因として新型コロナにおける不況があげられます。
その一方で、「競売」にかかる物件数はここ10年で徐々に減少しています。
(リンク)
ローンの返済が滞ると最終的には抵当権が実行されることとなります。
そんな中で件数自体が減少している理由としては、かかる前に任意売却で対処する人が増えていることが予想されます。
任意売却については後ほど詳しく解説します。
ローン返済が滞ってから競売までの流れ
銀行のローンの返済が滞ると物件が差し押さえられ、最終的に強制的に物件が売られてしまいます。
滞納があったときからどのような流れで手続きが行われるのでしょうか。
①銀行からの督促
ローン返済の滞納が発生してから1~3ヶ月後は、銀行から書類や電話による支払い督促が行われます。
銀行から督促が届いたら速やかに返済できなくなった事情を説明しましょう。
この段階での相談であれば、ケースによっては支払い猶予や期間延長などの対処(リスケジュール)ができる場合があります。
それでも返済が困難な場合は、次の措置に進みます。
期限の利益を喪失する
滞納発生から6ヶ月ほど経過したら、銀行から「期限の利益を喪失させる」という内容の通知がきます。
期限の利益は、「返済を数十年に分割して毎月返済する権利」のことです。
つまり期限の利益を喪失すると分割返済の権利がなくなってしまい、銀行に残った債務をまとめて請求されることになります。
保証会社の代位弁済
期限の利益を喪失すると債務者は残った借金を一括で支払う義務を負います。
しかし、残債務を全額一括で支払うことは困難です。
そうするとローン契約時に加入した「保証会社」が債務者に代わって残債務を一括で立て替えることになります。(代位弁済)
代位弁済以降、これまで銀行がもっていたローン債権は保証会社の名義に書き換わり、債務者は保証会社に支払い義務を直接負うこととなります。
物件の差押え
代位弁済されてしまった後、保証会社が競売を行うために債務者の物件を差押えます。
差し押さえられた物件の登記簿には債権者(保証会社)の名義と差押えの履歴が記録されます。
競売の決定
差し押さえからおおむね1~2ヶ月後、裁判所から競売開始の決定が下されます。
このときから正式に競売の手続きがはじまることとなります。
競売情報の一般公開・入札の開始
決定後、物件の情報が一般公開され、不特定多数の人が入札できるようになります。
開札・落札者の決定
入札の期間が終了したら開札が行われます。
オークションと同じ要領で、一番高い入札額を出した人が落札者となり、物件を取得する権利を得ます。
裁判所から明け渡し命令
落札者が確定したら裁判所から物件所有者に対して明け渡し命令が下されます。
落札者が支払った代金は一旦裁判所を通して債権者の弁済に充てられ、余った場合は所有者に返還されます。
競売のデメリット
競売によって処分された不動産の代金は借金の弁済に充てられますが、債務者にとってはデメリットだらけです。
競売は絶対に避けたい理由について紹介します。
実勢価格よりも安い
オークションは市場よりも安い金額で商品を落札することが醍醐味ですよね。
不動産も同様で、市場で売り買いされている価格よりも低い金額で入札されることがほとんどです。
一般的には実勢価格の5~6割で落札されることが多いようです。
その上、裁判所の命令には強制力があるので、ひとたび落札が確定したら価格に納得していなくても明け渡さざるを得ません。
残債が残る可能性が高い
取引市場よりもかなり安い価格で買い叩かれるので、落札額がローンの残債務を下回ることが珍しくありません。
不足している場合は、落札後も借金が残るおそれがあり、最悪の場合は自己破産ということも考えられます。
知人に知られるおそれがある
競売に出た物件の情報は一般的に公示されます。
そのため、ローン滞納の事実が知人などに知れ渡るおそれがあります。
手続き中には執行官や評価専門家が現況調査を行ったり、入札希望者が物件状況の下見に来たりすることもあり、プライバシーが害されてしまう問題もあります。
競売にかかるくらいなら任意売却すべき
任意売却は、所有者が自ら不動産を売却して借金を返済する方法です。
自由意思のもとで契約を行うので、取引市場からかけ離れていない価格で売却できるというメリットがあります。
一般売買とは異なり、任意売却は債権者(保証会社)の債権を守るための手続きであるということを意識するべきです。
任意売却ができるタイムリミット
不動産が競売にかかり、落札者が確定すると任意売却ができなくなってしまいます。
ただし確定前であれば、残債務をすべて清算することで手続きを中断できます。
不動産売買契約は代金清算まで1~2ヶ月前後の時間を要しますので、任意売却をするならできる限り早めに動くことが推奨されます。
スピーディに任意売却するには?
不動産の一般売買と異なり、任意売却は専門的なスキルが必要です。
任意売却をスピーディに進行するためには業者選定がもっとも重要です。
任意売却を検討するなら、「任意売却」の実績が多く信頼のできる不動産会社を選ぶようにしましょう。
まとめ
物件が競売にかかってしまうと債務者にとってのデメリットが大きいということについて解説しました。
ローン滞納後から実行されるまで数ヶ月の時間がありますので、その間で任意売却の動きができるようにしたいところです。
支払計画に困難な状況を感じたら、すぐに対策をとるようにしましょう。